天使分の涙と悪魔分の一生

3羽の天使の影が おままごとをしながら あと1羽の天使を探している
クリスタルの角笛を吹きながら 天国に帰れないままだ
僕はその天使分の涙を流す

羽の破けた悪魔は 子供たちにいじめられている
ただ悪魔だからというだけで いじめられていた
悪魔は反撃しなかった 地獄に堕ちろとも言わなかった
僕はその悪魔分の一生を想う

僕は弱い人間だ

guns

突きつけられたいくつもの銃口は僕を縛る
頭上からは絶えず無数の氷が降ってくるよ
考えることをやめてしまった
痛みと冷たさの似ていること
時間がないのに閉じ込められた羽虫みたいに
本能で飛び回るがぶつかってしまうのに
命ある限り飛べと絶えず命令する誰かがいる
目の前のたった1つの点の黒
その色をすべてと思ってしまう
突きつけられた銃口からギリギリと力が伝わる

見慣れたビルの街並みが

いつしか海に変わっていた

波は涙をさらっていった

それでも水底に咲いた花は上を見上げ

これが最後の歌になるわと

途切れることなく声をあげた

ここはひどく透明な世界

見落としたものは沈んでゆく

それに引っかかった僕らは沈めないから

太陽に一番近い生き物になる

ありがた迷惑な話

選ばされた恵み

化石から蘇ったやつらに今度は食われる番

波は涙をさらっていった

わからなくなってしまった

水平線の先にはなにも見えない

 

月とねむる

静かな夜を自分だけのものにして
月とねむる
比べてみると小さな手のひら
その中に星を集め
月とねむる
月は何も言わないからね
安心してねむってね
なにかしてあげられることはないかと
きみに電話しても
ねむっているなら出なくていい
どんなに話しても言いたいことはたった1つで
たった1つの月とねむるぼくは
たった1人 ただ1人
きみもそう感じているなら
それがぼくら 2人の1つ

誰もが月を目指したが
途中で疲れ果ててしまったので
月とねむった
独り占めの静かな夜
不思議な不思議な夢をみた

ドローム

稲穂の色ではない
古びた金貨のような黄金色の月がいくつもいくつも空高く
24時間周りをうろうろしてる
月は僕に勘違いさせるのだろう
狂気と正気のインスピレーションを得
ただ絵を描くんだって言いながら小銭しか持ってない
ポケットの中にあるくしゃくしゃの覚えのない紙片
今すぐにでも忘れてしまえる
曖昧レンズで物を見て
誰もいないところに向かって議論して
秋が来たら落ち葉を集め
内緒を隠して一緒に燃やす
まばたきしたらもう違う風景の中
ランダムであの人に会うんだ
優しい3つの言葉をもらって生きられる
また会いたくてさようならと言っても
もう夢の中にすらいなくなった
オアシスが無いと知って砂漠をさまようような
僕は壊れたピストルで
時たま吠える1丁のピストルで
行きたくなくても行かなくちゃならない
さっきあった足跡がもう無くなっている
針路を失っても食料は充分
あふれだした恵みに頭を抱えた
滞在する1つの点は次の点を見つけたくても
おんなじような白紙が次のページにあり
インク切れのペンを背負って移動している
だから踏切の向こうで待ってる
通り過ぎる車両の隙間からなにかサインを送ってくれ
そしたら気兼ねなく会いにいける
おれの引いた線におれはとまどっていた
入ってほしいのに誰も入ってはくれない
あの人は例外として
怒りながら入ってきてくれた
おれは怒られてると思ってなかった
嬉しかったという気持ち
記憶をいじくる天使の仕業かもしれない
だとしたらワインボトルの中にある小さな手紙をどう読めばいい
真っ白な部屋で真っ白なパズルを解いては組み立てる
僕についた色は段々はげていって
元ある色を忘れてしまう
透明無色でもそこにある
気化するアルコールのように
何かが頭のてっぺんから抜けていく
これは約束の場所じゃない
いつの間にか取り付けられた汚い契約だ
色んな絵を踏んでまた真っ白に戻れば
おんなじポーズを取りながら次の瞬間へ移動する
この余白になんと書こう
真似されるような筆記の署名しかできないから
僕は僕自身に名前を記して
今日の許可を得る
感情がちぎれて路頭をさまよう
それが見えているのは酔っ払いたちだけ
感じ取れるのはあの人だけ
溶けたろうそくを集めて新しいろうそくにでもしよう
屋根裏部屋で愛を考えるよ
遠慮はいらない
とっととやってくれ
吊り革から手が抜けないまま
天国行き
返事はいらない
最後の勝手
最初のお願い
ここから先は入れません

壁の花

「みんなはさ」

「みんなみたいに」

みんなって誰だ

きみの話を聞いているんだぜ

きみの話し声に耳を傾けてるんだ

気にしなくていいよ

きみはきみに夢中になりなよ

好きなことを喋り続けなよ

自己紹介で嫌いなものなんて

あんまり聞きたくないもの

みんなはいるようでいないもの

だけど決して独りではないこと

いつも片隅に置いてくれよ

思い出してくれよな

いつまでもきみを想っているんだから

運命なんかより

余程素晴らしい選択がある

きみがぼくを選ばなくても

忘れないでくれよな

こういうやつもいるんだぜ

覚えていてくれよな