骨だけになった夏のお墓に涼しげな眼をした秋がやってきた
秋は女で、3人の四季の誰のことも好きではなかった
特に夏のことは頭が悪い男だと思っていたが
いつも無邪気に笑っていた様子を思い出すとたまらなくなり、ここへきていた
ただ秋には何も言いたいことがなかったし、
長く垂れた自分の上着が風に揺れるのをずっと見ていた

そのときぼくは物語の中にいて次のページがめくられるのを待っていた

・ロックとポップとパンクとフォークで日が暮れたからおうちに帰ろう

・遠慮はいらない、やってくれ

・驚いたきみは少女のような顔をしてた

・夜中の誓いは次の朝には忘れてしまう

・散歩するように生きてみたいんだ

・いつかは終わる旅なんだと少し寄り道

・よぞら、じゅうじか、つめたいかぜ よぞら、じゅうじか、つめたいかぜ

・もうずっと季節には色がないまま 枯れた庭にて

・感傷と切り離した冷たい息が欲しいです

・僕はギターという楽器を弾いていてメロディという人を探している

・この気持ちに時間はあまり関係ないと思うんだ 聞こえてるならノックを2回

・最近調子はいかがですか?もう誰にも内緒で遠くへ行ったりしませんよ

・「ぼくのすばらしいいたみへ!ありがとう」

・誰かが夜な夜な秘密裏に数字をいじってる。だけど何の数字だ?さあねと時計が言う

・鏡張りの部屋の中で鏡を持って立ってるようなもんじゃないか

・君が閉じ込めた幽霊が泣いている。幽霊はきっと君に伝えたいことがあるんだよ

・月曜日の雨の中にいて、日曜日の暖かさを思い出してる 真っ赤な薔薇が散っていく

・東京で見える唯一の星が、あなたのふるさとはあっちですよと教えてくれた 
 けど僕!まだ帰りません

・冷蔵庫の中キンキンに冷えた昔の写真 

・誰も見てないぜ!おまえの日記なんてな 準備体操をよくしろよ

・君のことを考えるけどまったく検討つかなくなる ではではここらでさようなら

・刻一刻と形を変える心を持って、たった1つのことを正しいとは言えないわけがある

・ないものねだりは常とう句、あの子の人生はあの子の主観だからね 

・エンドレスミラー、エンドレスミラー、エターナルエターナルフォーエバー

・まぼろしみたいな10代なのだ ユニコーンとかペガサスとか、そんな生き物

・空中に女の子の絵を描く。窓を開け、風を入れればその子はいなくなる

・僕は使い古した持ち物を捨てきれない旅人で
 家族や恋人たちが描く素晴らしい絵を見ている

・ロックンロールのバイクにまたがって 出口を探しにとおくへ行きたかった 

・彼女の前で名もない墓標のように突っ立っていた 彼女は両手を広げたままだ

・時代の流れに舟を浮かべてあなたと旅をしたい どんな舟でもかまわない

・僕たちがつけてきた足跡はいつかある意味を持ち勇敢な戦士のようにここに立つだろう

・「私は実験の過程であり私を実験する科学者でもある」宮沢賢治が言ったような言ってないような

・朝焼けとゴッホの描く朝焼けは全く違う 正気と狂気の間から鮮烈な色を投げてくれ

・4つの季節のメリーゴーランドがくるくるくるくる回る回る

 

そのときぼくは物語の中にいて次のページがめくられるのを待っていた

ばん

誰もいない海辺にボロになった船
焚き火のあとに塩のかたまり
ぼくは白い鳥
七色の夢
星でできた時計
遠きふるさと

 

ピストル ばんばんばん
ピストル ばんばんばん
ばんばんばん
ふるさとに帰る夢をみたのです
みんな泣いておりました
ぼくの戦いは終わりません
ふるさとに帰る夢をみたのですが
目が覚めてもだれもいない
だれもいない
それはぼくもいないような気がする
ピストル ばんばんばん
ピストル ばんばんばん
ばんばんばん
聞いたこともない動物の声
ぼくがいないような気がする 長い夜
毎夜毎夜 ナイフの傷
帰りたいです

頭がいっぱいになる。音も景色も遠くに感じる。
静かなほど怖い。もう一人の自分にベッドに抑え込まれてるように。
あるわけないのに自分に罪を感じ始める。
ただそれも自己愛かと思うとどこまでいってもきりが無い。
僕はなんにも動いてないのに疲れている。ごめんなさい。
この沼から抜け出さないといけない。
ネバーエンディングストーリーの馬みたいだ。
疲れてはいけない。ただちょっと疲れた。
ひとまず抜け出さないと。

からからの夏(八月大成)

読みかけの本をほったらかしたまま。気の抜けたソーダ水を捨てようか迷って。話半分でうなずき、やっぱり遠くの空を見つめてしまう。淡い雲の合間には、たとえば尾崎豊がいる。阿部薫がいる。チャー坊がいる。ただみんなこちらに背を向けている。なにも言葉を発しない彼らから孤独を感じるのは、僕の孤独を認めて欲しいからだろうか。いつの間にか雲の形が変わってる。完成図のない作りかけのパズルの上に寝転んで天井に毒突く。曲がり角から一本の角。現れたのは幻獣ユニコーン。背にまたがって指を吸っているのは僕。まぼろしなんかじゃ、ないんだぞ。きっと空き地に向かっているんだね。子供たちはそれぞれ自分のヒーローに救われたいはずだから。空の青を切り取ったら雲はどこにあるのだろう。ヤケドしそうな空白。僕の名前を呼ぶあの子は僕が宿題をちゃんとしてきたか心配してくれてるみたい。気味の悪い子守唄を聴きながら眠れない赤ん坊は言葉の出口を自分の中に探し始める。当たり前に隠れた嘘がちょっかいを出す。捨てられたゴミは自分の目線を自分では選べない。だからドブ川はやけくそに抱擁してる。ガラスの球体の中であきらめた人が冷たさに頬を当ててる。公園の鳩は石像に優位なのさ。海から生まれてきたはずが海水が目にしみるんだ。仮装し、火葬されることを仮想する人。QはAを後ろの方で待ってる。Zは誰も見てないのをいいことに眠りにつく。悲しい雪女はつららを持って脅迫したが、黙秘権の行使によりつららは解けてしまった。未知に生かされ、殺されて。暑さで干上がった頭脳の空洞で、ビー玉がからからと音を立ててる。念仏まがいのからからの夏。からからの夏。

ふと涙をこぼして 困ってしまう きみ
きみには きみも知らないきみがいる

涙には必ずわけがあって
知らないきみはきみに気づいてほしいことがあるはずだ
助けたいって思ってる
だからきみはきみをあまりいじめないでね

天使分の涙と悪魔分の一生

3羽の天使の影が おままごとをしながら あと1羽の天使を探している
クリスタルの角笛を吹きながら 天国に帰れないままだ
僕はその天使分の涙を流す

羽の破けた悪魔は 子供たちにいじめられている
ただ悪魔だからというだけで いじめられていた
悪魔は反撃しなかった 地獄に堕ちろとも言わなかった
僕はその悪魔分の一生を想う

僕は弱い人間だ