鏡の前で「おまえは誰だと」1000回問いかけてみても僕は気が狂わずに本当にひとりぼっちだと感じるだけだと思う

許せない気持ちが遠ざかったり近くなったり見え隠れしながら生きていくのだろう。僕はまるで銃口を溶接された鉄砲だ。そんなものになんの価値があるのか。作られた意味はなんなのか。自分のことが嫌いになる、それが一番嫌なことだ。心底くだらないことだ。一人と独りは全然違う。孤独と孤立も全然違う。真っ白な砂漠の中に僕という人間の輪郭だけが揺れている。美しいものが見たい。分かち合い、解り合いたい。世の中がつまらないと思ったことがない。いつも自分の負い目と意気地の無さで世の中に背を向けてしまう。本当にくだらないことだ。今までの人生と今の気持ちを書き起こしてFAXで送ってやりたい。賭けに勝ちたい。抱擁したい。もっと喋りたい。知らない路地から大通りに出たい。手を振った後にジョークを言いたい。いつも明かりのついた部屋にいたい。台所でお酒を飲みたい。必要の無くなった壁を壊したい。友達の絵を飾りたい。一緒に寝た人より後に目が覚めたい。窓を開けたい。花屋の店員に薦められた花を買いたい。見切りをつけたい。会話の終わりに気の利いたことを付け足したい。大事な人にだけそうしたい。あてもなく歩きたい。水だけ飲みたい。目を見て話したい。子供の頃を知りたい。許されたくないが許したい。犬の鎖を外して周りたい。あきらめるまで穴を掘りたい。一日の内に特別なことを二つしてみたい。詩を送りたい。誰にも言わないでおこうねと約束したい。同時に同じものを見つけたい。連絡も無しに訪ねたい。いいことをしたと思いたい。ライブの最後でギターの弦を全部切りたい。気軽に声をかけたい。本当のことを言ってもらいたい。踏み込まれたい。踏み込みたい。セントラルパークの桜が見たい。ツンドラで叫びたい。何度でも立ち上がってやりたい。

彼女のつばさ

彼女はつばさを持っていた

白くやわらかな2枚のつばさ

彼女はどこへでも行けたのに

僕のとなりを歩いてくれた

 

僕らは夜空を見つめていた

言葉に何の意味があるのか

時には夜のしじまが2人を

1つに合わせて繋げてくれた


どこまでも行こうよベイビー

どこまでだって行けると思うよ

いつまでたっても変わることなく

今までだって飛び越えていける


いつかは終わりと知っていながら

それはずっと遠くに思えた

開け放たれた窓から風が

白いカーテンをひらひら揺らす


薄明かりの夢の中で

僕は1人で涙を流していた

目が覚めた後のいつもの部屋で

同じように涙を流していた


太陽は届かぬ過去に

地球はまわりまわって現在に

月は遥か未来の彼方に

彼女は煌めく星の向こうに


彼女はつばさを持っていた

白くやわらかな2枚のつばさ

彼女はどこへでも行けたのさ

彼女はどこへでも行けたのさ

心になにも無いふりをするほうが難しいんだ


Father And Son - Cat Stevens (Original Video)


昼間に父の何気ない一言にめちゃくちゃ腹が立ってしまい、家を飛び出た。まるで不良少年のようなことをしてしまった。だけど僕の中に未だそんな未熟な少年が卒業出来ずに留まっているのもたしかだった。父の発言で、僕は自分のことがまったく理解されていないことに悲しくもなった。父も勝手だし僕も勝手だと思う。両親に産んでもらい、愛情たっぷり育ててもらったことに感謝している。しかし過去のことでどうしても許せないような怒りや悲しみがたまにこみ上げてくる。その矛先を誰にも向けまいと力いっぱい引っ込めようとするが、それ以上の強い力に引っ張られ、操れなくなる。僕は、父と母に踏み込んで来て欲しかった。父と母の意志を僕にぶつけて欲しかった。それに反発したかった。それに納得したかった。そっとしておいて欲しくなかった。僕はずっと暗闇の中を宙ぶらりんで過ごし、自分がどっちに向いているのかもわからなくなっていた。けどそれは過去の話で、僕はもう大人になったので自分で自分を変えるしかないことはわかってる。自分の成長を知ってるのも自分だからだ。

今朝、事が起こる前に自分が幼かった頃お母さんに抱っこしてもらったときとお父さんに抱っこしてもらったときの違いを、感覚を思い出していた。なぜだかふとそんなことを思い浮かべていたのだった。

今はスーパーの前のベンチに座って日記を書いている。目の前を小さな女の子とそのお母さんが歩きながら話してる。女の子は"水の色は青なのか透明なのか"とお母さんに聞いている。お母さんは適当に相槌をうっている。僕は、水の色は青でもあるし透明でもあると思った。

誰かを理解したいと思い、誰かに理解したいと思われること。寄り添うとはそういうことかな、と僕は思った。長い間"人間は一人だけど、人生は一人じゃない"という言葉を昔読んだ漫画のセリフだと思っていた。しかし、調べてもそんな言葉はどこにもなく、それは僕の内からこぼれ落ちた言葉だったのだと結論付けた。そのことを思い出した。それから父ともう一度話すために家に帰った。あふれるままにはなったが、お互いの気持ちを話し合った。僕は僕が自分の力で家を出て行けば、自分にもみんなにも一番良いんだと話した。ただそのことが未だ自分にとって難しくて悔しい。父は僕の幸せを願っていると言った。そこで僕の中に言葉は無くなった。自分のために動くしかない。家族の幸せを願う。ああ!!

僕がいない

"おまえはな、考え過ぎなんだよ。ギターでやることってもっと単純なことなんじゃないの" 昔、そう誰かに言われたことがある。あまり行ったことのない街の路地裏を歩きながら。その頃どこへ行くにもギターを担いでいた。大して何にも考えていなかった僕は何とかなると思っていた。気がついた時は、いつも1人で決まった場所にいた。好きな絵を見ながら身動き出来ないでいた。"あなたはなにを考えてるかわからないところがいいの" 彼女と僕はおんなじ花ではあったけど、違った季節の中にいたのだろう。慣れない気候の中で僕は自分のことを狂っていると思い始めた。本当は少し風邪を引いてただけなのに。誰もいないところだったら盛大にくしゃみするくせに。一人きりでカッコつけて歩いていて、僕は僕がいないことに気づいた。どこへ行っても僕がいない。どこにもいない。そのことを僕だけが知っていた。枯れた噴水の周りを、半透明の子供たちが走り回っていた。僕を通り抜けていくとき、怖いくらい冷たい感触が伝わった。駅前にある大きな時計の長針は完全に動きを止め、短針は痙攣しながらおんなじ一秒を繰り返していた。薄紫の煙がアーケードに立ち込め、もう僕はどこにもいなくなっていた。

月の光

愛しかない。もう愛しかない。それより他ない。これからは愛しかない。ここから先には愛しかない。失うものも、得るものも、愛になる。目を閉じて、目が覚めたとき、ありのまま映る世界に充分になる。特別なことをしなくともその世界で事足りる。愛は開くし、愛は吹く。愛は打ち、愛は弾く。いっぱいになると思ったら空っぽになる。ここに立ちながらあそこに立ってる。これは僕が生まれたときの話で、けれども、これはまだ僕が生まれていないときの話だ。愛だけがある。愛だけがたしかにある。愛は静かに壁にもたれかかる。愛は僕に色を塗る。ただ愛だけがある。愛しかない。愛しかないんだ。果たして手を差し伸べたのはどっちだろう。ピアノの音色がぽろぽろとこぼれ落ちる。それはずうっと昔まで。灯りをぜんぶ点けたって、月の光は隠せやしない

鈍色の季節の変わり目で 空と街とが溶け合った

つながった世界を見た

それは1つのピリオドで

僕の日記はそこで終わった

夢の中ではいつも鍵を無くしているから

心配しながら眠れない冬を送るだろう

明日には菜の花が咲き乱れ

その黄色を目印に歩いていく

ふるさとが心地よくなるまで旅に出る

元気いっぱいに北上しよう

一番北にはたぶん

たぶん墓場がある

眠れない芸術家たちの

晴れそうにない曇り空の下に

..........

一番星がいつも変わらずこの窓から見えるように

どうかお願いします

まだ幼い魔法使いは

古びたナイフを椅子の足にくくりつけ

必死になって祈りを捧げた

..........

おれは顔が描かれた鏡だ

手足のくっついた鏡

おれを抱きしめる人たちは

みんな己を抱きしめ

ずっとそばにいてよと言うのだ

そんな勝手なことがあるか

..........

むせるような霧の中に足音が聞こえる
獣たちはいつもどこからか僕を見ている

僕に獣たちが見えなくとも

獣たちには見えている

..........

真っ赤な嘘の太陽

黄が狂ったひまわり

白けた空の心

悩ましい僕のブルーは海へ還りたがってる

..........

感情が論理を追い越した

夜はなんだか眠れない

苛立つ炎がベッドを囲み

叫ぼうとしても叫べない

[EMOTION]

"どうかお大事に"

..........

なんだかさみしい夜 眠れない夜

時計の針の音が気になった

僕が子供の頃に植えた木の実は

大きな大きな木になった

想い出はいつも優しく語りかけるけど

遠くには今も走り続ける友達がいる

.......... 

金の鳥籠の中から眺めてる

丈夫な翼もあるし 

飛び方だって知ってるけど

鍵を開けるすべはなく

金の鳥籠の中から眺めてる

金の鳥籠の中から

.........

昼間は楽しいことをして

ホントのことは夜に言いたい

それなら夕陽が沈んでも寂しくないだろう

僕は友達より早く目が覚めて

カーテンを開けるかどうか迷ってる

.........

あなたが救われたと言った帰り道の途中で

わたしの身体の中を風のように光が通り抜けた

子供の頃に見た夢を今でも覚えているなんて

信じてもらえないことでしょう

あなたが救われたと言った帰り道の途中で

あなたがだんだん透明になっていく気がした

わたしたちは変わっていく生き物で

忘れてしまえる力があるとあなたは言った

.........

ロックンロール!

いつも扉を開けっぱなし

ありがとう

.........

歌にはきみが必要だ

僕だけじゃちょっと映えないのさ

歌にはきみがいてほしい

僕だけじゃちょっと間が持たないのさ

歌にはきみが必要だ

きみが好きじゃなくても

歌わせてあげて

ところできみって一体だれ

むかし会っただれかかい

だれでもないようなきみがいて

歌の中に暮らしてる

.........

これがあなたの後の骨

あなたを支えた後の骨

つかむと脆く崩れてしまった

 

僕がよぼよぼのじいさんになったならば(風景)

86歳になる祖父が体調を崩したため入院した。昨日、父とお見舞いに行った。
祖父はベッドに横たわり、以前より目が虚ろに見えた。
認知症の症状も表れ始めてはいるが、意識はハッキリとしているように思う。
入院とはいえ、86歳にもなるのだ。体調を崩さない方が不思議なことかもしれない。
家族として、祖父が長生きしてくれていることをありがたく思う。

静かな病室で祖父を見ていると「おじいさんになるってどんな感じ?」と尋ねたくなる。
決して尋ねることはないのだけど、そんな子供じみた疑問が自然と頭に浮かんでくる。
いつか僕もおじいさんになるのだろうか。ふと、古いこんな歌を思い出した。


ザ・ディランⅡ 風景


「風景」作詞作曲:中塚正人(センチメンタル・シティ・ロマンス)

僕がよぼよぼのじいさんになったならば
僕は君を連れ この街を出るんだ

きっと待ってるさ 故郷の山や河が
生まれ育ったあの土のにおい

僕たちの行くところ 僕たちの住むところ
故郷のあの丘さ あの雲の下さ

僕がよぼよぼのじいさんになったならば
僕は君を連れ この街を出るんだ

 
センチメンタル・シティ・ロマンスというバンドが70年代に発表した曲「風景」
前回の記事でも紹介した、ザ・ディランⅡのカバーバージョン。
アレンジも素晴らしく、大塚まさじさんのやさしい歌声がハマっていて好きだ。

祖父は長い間この街で暮らしてきた。山の中にある、今僕がいるこの家で暮らしてきた。
今年の春から入院したり、市内の介護施設に入ったりで我が家には一度も帰っていない。
ただ、お見舞いに行くと「家に帰りたい」と口にするのをよく聞く。
家は、故郷はこんなにも近くにもあるのに、家族として帰してあげられないことがもどかしくもある。
祖父の気持ちを想う中で、僕はこの「風景」という曲を思い出したのだった。

そして、僕がよぼよぼのじいさんになったならば。あまりに遠い未来に感じる。
25歳では想像も出来なければ、こうなっていたいという願望も特に思い浮かばない。
生まれ育った家がある村も、今や住人の殆どがお年寄りだ。
おじいさんになったとき、もう村には人がいないかもしれない。
村自体が無くなっているかもしれない。寂しいけど、そんな現実的な予想は出来る。
その時、僕はなにをしているだろう?それまでに、何をしてきているだろう。
もし生まれ育った家におじいさんの僕がいるなら、田んぼに菜の花をいっぱいに植えたいかな。
同じ「風景」というタイトルに、こんな歌(詩)もある。


山平和彦 / 風景

「風景 純銀もざいく山村暮鳥

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしゃべり
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな