突き出した拳をゆっくり開き、その中にある空白を認める。霧は晴れたな。言葉も渋滞するし、帰れないまま死んだりする。いくつもの墓を眺めながら、沈黙に耐えきれずに歌は生まれたのだろう。歌が必要な人たちのために。ともかく、今夜はこの明瞭な頭脳を味…

もう6月だということにさっき気がついた。低気圧と高気圧にもまれながら、浅い眠りの中でいくつもの夢を見た。萌える草木の光を浴びて、誰も知らない涙をこぼした。その日のうちに掴めそうな感覚が、その日のうちに消えてった。ふるさとを指す一等星が、いつ…

仲間たちの輪から離れ、帰路につくとき、暗闇の中にちょうど1人分の空白を見つける。それが光であった試しはないのだけれど、僕はすっかりそこに落ち着く。暗闇は安物のスポンジのように荒いが、やわらかい。チープというのは簡単に替えがきくから安心する。…

朝っぱらからセミが鳴く 毎日のように蚊に食われる 血をくれてやっているのだと言いながら 片手で足を掻いている 台所に置いたコバエ取りは機能せず 目標は依然目の前を嫌がらせのように飛行中 半年間オスだと思って飼っていた熱帯魚が 実はメスだということ…

魂の復活

恐ろしい夢を見た。殺人鬼に襲われ、逃げて逃げて、ついにはその殺人鬼を殺してしまうのだ。疲れ切って目が覚めて、すぐさまこの夢を誰かに伝えたくなった。僕にはこの夢の意味するところがわかっていた。ナイスタイミングで報せがくる。喜ばしい内容だろう…

あなたを置いていかないで

夜明け前の青白い空に捧げる口笛の音色。銀河鉄道のレールを敷いて、僕たちはどこまでも行けるはず。けれども列車はやってこない。きっとこの駅に着くにはまだ早過ぎるんだろう。日付が変わって明日になっても、明日のために眠らなきゃいけないなんて。肝心…

flower in the rain

急な土砂降りのときに一人でいるのは物悲しい。僕は左手で本のページをめくりながらビールの空き缶に雨粒溜めて飲んでるよ。すると、自分自身の記憶がまるで自分のものでないような気がしてくる。僕にとっての一番の他人が僕になる。そのとき開いていたペー…

月の光

愛しかない。もう愛しかない。それより他ない。これからは愛しかない。ここから先には愛しかない。失うものも、得るものも、愛になる。目を閉じて、目が覚めたとき、ありのまま映る世界に充分になる。特別なことをしなくともその世界で事足りる。愛は開くし…

鈍色の季節の変わり目で 空と街とが溶け合った つながった世界を見た それは1つのピリオドで 僕の日記はそこで終わった 夢の中ではいつも鍵を無くしているから 心配しながら眠れない冬を送るだろう 明日には菜の花が咲き乱れ その黄色を目印に歩いていく ふ…

毎日僕は油絵の一番上 色とりどりの山のてっぺん どうやったって心はくたばらない 無限の気持ちが 僕の知らない星を知りたがってる 泳げなくても浮かんでる 僕の歩いてきた道を 時には不思議がるけれど やっぱりそれは僕が意図して歩いた道で この一筆に少し…

つけっぱなしのテレビの隣、少し開いたふすまから「もしかして誰にも言えないの?」いや…想像していた自分と違ったことにきまりが悪いだけ。「席を譲りましょうか?」いいんです。立っている方が楽なんですよ。一面一面景色を揃えて次の駅のゴミ箱に捨てる(…

イバラのバラッド

「これはある悲しい一輪の薔薇の物語」と言いながら近づいてくる男がいた。花売りなのか語り部なのかよくわからないやつだと思った。スーパーマーケットの入り口には数十冊の"ライ麦畑でつかまえて"がtake freeのポップと共に置かれてる。横にはスプレー缶で…

雲の隙間から黒い手が伸びてきて僕のしっぽをちぎってしまった極彩色のハンカチが何枚も何枚も舞い落ちてくる人々は服を着る意味をなくし「死ぬまで踊り続けて」というタイトルのペーパーバックを片手に街路樹に火を放ち、裸で踊りまくったその様子を見てい…

生きていると、たった1つに憧れるんだ海岸で希望の物が流れ着くのを待ちながら遠くの船に夢を投げていたこの途方も無い距離は手近なものだけでは数えきれない瞬く星は何か言ってるのかと思っていたよ僕にはずっとそう思えていたよ帰り道がわかっているから帰…

何も言うことがないその必要を感じさせない考えることもなくなったどんどんのっぺらぼうになっていくなにもない

「死んだら無駄」と左脳は考え「死んだら無だ」と右脳は考え「そんなのNOだ」と身体は怒るが心ここに在らず目は遠いところを見ていたし心地いい音楽を耳にしながらももうなにも言うことがないと口を閉ざしたはて、魂のゆくえとやらは?---------------------…

骨だけになった夏のお墓に涼しげな眼をした秋がやってきた秋は女で、3人の四季の誰のことも好きではなかった特に夏のことは頭が悪い男だと思っていたがいつも無邪気に笑っていた様子を思い出すとたまらなくなり、ここへきていたただ秋には何も言いたいことが…

そのときぼくは物語の中にいて次のページがめくられるのを待っていた

・ロックとポップとパンクとフォークで日が暮れたからおうちに帰ろう ・遠慮はいらない、やってくれ ・驚いたきみは少女のような顔をしてた ・夜中の誓いは次の朝には忘れてしまう ・散歩するように生きてみたいんだ ・いつかは終わる旅なんだと少し寄り道 …

ばん

誰もいない海辺にボロになった船焚き火のあとに塩のかたまりぼくは白い鳥七色の夢星でできた時計遠きふるさと ピストル ばんばんばんピストル ばんばんばんばんばんばんふるさとに帰る夢をみたのですみんな泣いておりましたぼくの戦いは終わりませんふるさと…

からからの夏(八月大成)

読みかけの本をほったらかしたまま。気の抜けたソーダ水を捨てようか迷って。話半分でうなずき、やっぱり遠くの空を見つめてしまう。淡い雲の合間には、たとえば尾崎豊がいる。阿部薫がいる。チャー坊がいる。ただみんなこちらに背を向けている。なにも言葉…

ふと涙をこぼして 困ってしまう きみきみには きみも知らないきみがいる涙には必ずわけがあって知らないきみはきみに気づいてほしいことがあるはずだ助けたいって思ってるだからきみはきみをあまりいじめないでね

天使分の涙と悪魔分の一生

3羽の天使の影が おままごとをしながら あと1羽の天使を探しているクリスタルの角笛を吹きながら 天国に帰れないままだ僕はその天使分の涙を流す羽の破けた悪魔は 子供たちにいじめられているただ悪魔だからというだけで いじめられていた悪魔は反撃しなかっ…

guns

突きつけられたいくつもの銃口は僕を縛る頭上からは絶えず無数の氷が降ってくるよ考えることをやめてしまった痛みと冷たさの似ていること時間がないのに閉じ込められた羽虫みたいに本能で飛び回るがぶつかってしまうのに命ある限り飛べと絶えず命令する誰か…

見慣れたビルの街並みが いつしか海に変わっていた 波は涙をさらっていった それでも水底に咲いた花は上を見上げ これが最後の歌になるわと 途切れることなく声をあげた ここはひどく透明な世界 見落としたものは沈んでゆく それに引っかかった僕らは沈めな…

月とねむる

静かな夜を自分だけのものにして月とねむる比べてみると小さな手のひらその中に星を集め月とねむる月は何も言わないからね安心してねむってねなにかしてあげられることはないかときみに電話してもねむっているなら出なくていいどんなに話しても言いたいこと…

ドローム

稲穂の色ではない古びた金貨のような黄金色の月がいくつもいくつも空高く24時間周りをうろうろしてる月は僕に勘違いさせるのだろう狂気と正気のインスピレーションを得ただ絵を描くんだって言いながら小銭しか持ってないポケットの中にあるくしゃくしゃの覚…

壁の花

「みんなはさ」 「みんなみたいに」 みんなって誰だ きみの話を聞いているんだぜ きみの話し声に耳を傾けてるんだ 気にしなくていいよ きみはきみに夢中になりなよ 好きなことを喋り続けなよ 自己紹介で嫌いなものなんて あんまり聞きたくないもの みんなは…

純度の高いものが好きだそれは僕にあるのかないのかわからないもので欲しがっているもので避けて通ろうとしているもの100%振り切ったらそれがどちらにせよバランスが悪くて倒れてしまう片足だけで歩けないのと似ているもし片足だけで歩く事が出来たのなら感…

彼女は入口、僕は出口を

彼女がひろげた入口を前にして僕はいつも出口を探したがる冷たい道の上でひねくれてかじかんでいた街灯に集まる真っ白な蛾たちを見つめまき散らされた鱗粉で汚いところを隠したりした遠くの山に火が見えて目指すところのような気もするしただの誘惑にも思え…

気の弱い悪魔

暑さはたった1つの音しか出さないみたいだその音は不愉快にジリジリと近寄ってくる表通りにパレードが来て子供たちが叫びながら手を振っているなにかください 良いものを太鼓をどんどんと叩いてなにかくださいな閉め忘れた蛇口がすすり泣いている薄暗い影に…