きみがぼくを教えてくれる

僕は僕を記録する係です

 

「みんな、よく平気で歩けるな。どこもかしこもとんがってるのに。ぼくはもう新しい靴を買うのは嫌だよ。」

 

すり切れた背表紙を手にとる。開いた本の中でコートを着たホールデン君が風を切って走ってる。なにか喋っているみたいだけど、僕には聞き取れなかった。洋書だからって訳でもないらしい。ピカピカのバッヂをつけた少年は、少年だったになった。ある日ふと、自分の胸に輝くバッヂを見て気恥ずかくなったのだ。けれども捨てるに捨てられず、ほとんど開けることのない引き出しに突っ込んだ。年を取っていく身体の中で真珠のようにきらめく心は少し濡れている。毎日生まれたばかりだからだ。乾ききった落ち葉を掌でくしゃくしゃにして、自分はなにか言いたいことがあるらしいと気づく。新しいメロディは今まであったメロディを忘れさせるのか。そんな考え必要かな。もっと暖かくなれ。もっと風が吹いていてほしい。うるさくないぐらいの。