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きみがぼくを教えてくれる

僕は僕を記録する係です

春が来ないまま俺たちは冷たい息を吐いている そこから離れた方がいい!重たくなった雲が落ちるから 寒くはないのに 冷たい息を吐いている 「知ってましたか? こう、指をはじくと霜が降りるんですよ…」白も黒もない 灰一色 仮死状態の野原で ブレた瞳であいつが言う 俺はぼやけた黒目を拭う回数が増えてきた そのうえ手袋に穴が開いてることに気づく 指まで灰色になっていることに  気づく 光沢を失った黄金虫が 靴にぶつかる ああ もういいのに 「今持ってきますね。今度はうまく出来たんじゃないかなあ」 枯れ木に出来た洞に手を突っ込んであいつが話す もういいのだ 入ることも 出ることもできないこの場所に 俺たちは落ちてきたのだから… 飛ぶことのない蚕蛾たちが足元に群がっている 灰色になった黄金虫を乗せて 俺に登ってくる 俺はむせかえりながら 人差し指をくるくる回し なにかつぶやいている それはもう俺にも聞き取れなかった