真夜中、僕は家を抜け出して
パジャマ姿で黒い川を眺める
そうしてひとりぼっちの中に
なにか真実を見い出そうとする
川底には目を閉じた裸の女が沈んでいる
七色の薔薇の花を口にくわえている
流れることも出来ない重さが彼女の
悲しさなのかな
真夜中、今は二時を過ぎた
魚たちは目を開いて泳いでいるので
僕は思わず話しかけてしまった
一枚ウロコを売ってくれ 一枚ウロコを売ってくれ
あなたたちのその美しい鎧を
魚たちはそれは出来ないと言った
だが野性の海の想い出を語ってくれた
眠そうな魚たち 目を見開きながら
行かなければならないところがあるという
真夜中、今は三時半
ああ、僕は手紙でも書こうか
小さな舟に乗せて流すんだ
手紙には「読んでくれてありがとう」と書こう
返事は期待できないからね
まあとにかく今は朝陽を浴びて
粉々になっていく吸血鬼みたいな気分だよ
それなら君に杭で打たれる方が
いいと思ってるんだよ
真夜中、もうすぐ夜が明ける