雲の隙間から黒い手が伸びてきて僕のしっぽをちぎってしまった
極彩色のハンカチが何枚も何枚も舞い落ちてくる
人々は服を着る意味をなくし
「死ぬまで踊り続けて」というタイトルのペーパーバックを片手に
街路樹に火を放ち、裸で踊りまくった
その様子を見ていた富裕層たちはあらゆる電子機器の充電をやめた
高速道路を走る車内にいるのは僕だよ
助手席に座っているのに運転手の顔は見えない
バックミラーばかり気にしている
どうも僕に用意された夜があるらしい
幼い頃1人留守番していた僕に誰かがそうささやいたのだ
だから懐中電灯にはいつも新しい電池を入れていた
古い電池はぜんぶ庭の池に放り込んだ
学校にいる先生は家に帰ることばかり考えていたから
僕は窓辺で校庭に目線でSOSを描いていた
クラスで飼っていたニワトリが鳴いていたのはそのせいだ
輝く瞳の残酷な子供たちの前で大人たちの顔のしわは身を寄せ合うしかなく
職員室の机の上で目覚まし時計が鳴り続けていた
自分がどこにいるのかわからなくなったとき
きっと探すのは入口ではなく出口
不思議なもんだ
そうだよね
どうして砂漠の生き物は砂漠で生きようとするんだろう
目が覚めても目的地に着いてないと考え込んでしまう
大して役に立たないことばかりね
僕は未だ旅の途中だからおしゃべりなんだ