じりじりと炎が

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3泊4日の東京旅行へ行ってきた。幼馴染の家に泊まりながらのんびりとしたり、誰かに会ったり充実した旅になった。それでも時間が足りないと思ったけれど。時々街の中で1人になる時間があり、そんなとき僕には東京の街が穴だらけに見えた。浅い穴もあれば深い穴もあり、街行く人たちはそんな穴々を避けながら歩いているかのように見えた。穴は、たくさんの人たちが集まっていることで出来た穴だ。誰かが掘った訳でも自然に出来た訳でもない。東京にしかない穴だ。僕は唐突に涙を流した誰かのことを思い出し、泣きそうになった。雲が動いたり、風がにおいを運んで来なければきっと泣き出してしまっていただろう。東京の街のあちこちには煙が上がっていて、炎をおこしたのは僕の友達だ。しかし、ここにいるよと僕は言えなかった。熱い息を全部飲み込んで、トイレに駆け込んだ。見聞きしてきたことに、まぼろしは1つも混ざっていないんだよ。

 

夜、地元の街灯もない田舎道を家に向かって走っていた。たくさんの人が、友達がいる東京とは真逆の方向になる。誰からも遠ざかってゆく、記憶が薄れてゆくような感覚が強くなる。「なぜ?」という問いかけが心の中であちこちを行き交う。ぶつかってぶつかって、ボロボロになったその問いかけは「わからない」に変わり、死んだように横たわる。触れることの出来そうな弱く青い炎の中で、しんとする。誰もいないことは僕もいないことに等しい。ナイフが見る見るうちに錆びついてゆく。