ミッドナイトラジオ

間違いない、約束しよう。間違いのない約束をしよう。よく考えろ。よくよく考えてみろ。ここから飛び降りるなんて無茶なことだ。そもそも馬鹿らしいことだ。ちょっと小さく見えたくらいで強気になってるのさ。現実と幻の境目で風邪を引きかけている。言わばおれはもう誰の手にも届かない空飛ぶ風船で、いつかパチンと割れて、海の生き物を殺してしまうんだ。ごめんよごめんよ。街の灯りが綺麗だったんだよ。住み慣れた街に奇跡の破片を見つけたかったんだよ。それがもうどこにも無いのならゴミ箱の中で暮らしたっておんなじだって。それをどこの口が言いやがる。月は冷たい銀貨に変わり、最早大した価値も無い。湯気を立てた恋人たちは路地裏で赤い契りを交わし、野良犬は自分のしっぽで満腹になってる。見てみろ、なんにも関係ない夜さ。針の穴が見つからないんだ。なのに血は流れ落ちてるんだ。"でたらめ"と呟いて残りの水を飲み干す。蛇口をひねればいくらでも出てくるだろう。だが最後の水と決めたんだ。次はないぜってね。それはあんたには関係ないことだ。だからもう話をするのはこれで最後にしてくれ、次はないぜ……目の前に差し出したこの左手が題材なんだ。右手はそれを書くためにある。歩いていけばページが進む。何か言わなきゃならないのか?感じたことをさ。つけっぱなしのラジオから流れる音楽。ノイズというのは真実を包むオブラートみたいなもんだ。良い歌じゃないか。夢中になるような3分間。おれは引き返そう。また今度にしてやる。鍵は渡しておくけどな、いつも居るとは限らないぞ