みなごろしの緑


Phew - May

日記。「今日は良い天気でしたね」で会話が終わることもしばしば。お互いミットを構えて待っているような感じだ。日が暮れて家に帰る。雲が流れているのを見て、まだちょっと焦ってしまう。陽だまりに光る林檎をかじる気になんてならない。

 

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一人でふらふらと奈良県東吉野村へ行った。亡き祖母の故郷。ニホンオオカミ最後の地。幕末の志士、天誅組にとっても最後の地となった。僕は生まれたところとは違う緑を見たかった。それでも少し繋がりを感じる緑を。最後のニホンオオカミに想いを寄せる。家族はいたのかな。ほんとに身勝手な人間でごめんね。土の中のプラスチックは居心地悪そうにしてる。

 

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祖母は頭の良い人だった。文才のある人だった。戦時中投稿した作文が川端康成に評された、その雑誌は我が家に大切に保管されている。慈悲深い人だった。時々小さな女の子に見えた。自分の家で死にたいと言っていた。子供の頃オオカミの遠吠えを聞いたと言っていた。おばあちゃんが言ってるならそれはオオカミだったんだろう。初めて体験した身近な死が祖母の死だった。僕は不思議で仕方なかった。

夜になり、部屋のドアを開ける前から一人に退屈してしまう。僕は一人が下手くそだ。オルゴールのふたを開けながら知らないメロディが流れるのを期待しているようだ。思えば客が誰もいないライブハウスは寂しかった。客が満員のライブハウスも寂しかった。

夕方から眠りにつくまでの時間、大体台所にいる。ギターを弾けばいい具合に響くし、あとはずっと静かな場所。水に棲む生き物を飼いたいなと思う。亀とかおもしろい。子供の頃、使わなくなった浴槽の中で亀を飼っていたのだけど、雨の日に増水してしまって亀はどっかへ逃げてしまった。強い。

愛のゆくえ、魂のゆくえ