あなたを置いていかないで

夜明け前の青白い空に捧げる口笛の音色。銀河鉄道のレールを敷いて、僕たちはどこまでも行けるはず。けれども列車はやってこない。きっとこの駅に着くにはまだ早過ぎるんだろう。日付が変わって明日になっても、明日のために眠らなきゃいけないなんて。肝心なときに言葉は頼りにならないものだから、鼻の利く犬を羨んだりもしたよ。彼らはにおいで家路を辿ることが出来るんだぜ。真実とやらを求めるなら、付け足すことよりそぎ落とすことかもな。そうすりゃ今よりよく聞こえるだろう。余計なものを見なくて済むだろう。少なくとも、幸福の在り処は故郷より遠く離れていた。その時の僕たちにはそうだった。旅に出るなら物を知らない方がいい。知識で膨れ上がった重い頭は、旅の途中じゃお荷物になる。語りかける雨は雪に変わり、死んでしまったあいつの名を呼ぶ。いくら信じていても、いつまでも待つことなんて出来るだろうか。おれは疑問を積み上げて、時間稼ぎをしてるのさ。おそらくそういうことなのさ。まぶたの裏に夢がある。闇は光に対応している。水の波紋を描くために、彼は池に小石を投げ続けた。鳥は生まれ変わって魚になった。魚は死んでも目を閉じなかった。開いた蕾はきれいに咲いた。咲いた花は綺麗に散った。それからのこと。わたしのこと。わたしとあなたの間にあるもの。あなたはあなたを置いてかないで。それならわたしもついていける。