どこに行こうか

ほんのり春のにおいがする。まだ1月も半ばだけど、寒さは少し落ち着いたようだ。子供の頃はもっと雪がたくさん積もっていたように思う。夏の暑さはもっとマシだったように思う。僕が寝たり起きたりしている間にも、少しずつ世界は変わっているらしい。この人生にはなんでも起こる。同様にこの世界にはなんでも起こる。眠れない夜、頭の中でぼんやりと自分の人生の軌跡を辿りながら、そのあまりのヘンテコさに余計目が覚めてしまう時がある。パジャマのまま、今すぐ走り出したくなる。でもどこへ?夜の暗がりの中で何もかもが曖昧に混ざり合う。暖かい布団の中で甘ったれたことを考え出す。夢の中で会える人を選べたらいいのにな。

プライムビデオでアニメの『ぼのぼの』を見ていた。名前は知っていてもあんまり見たことはなかった。ぼのぼのの世界はのほほんとしながらも、どこか暗かったり哲学的だったりする。不思議な世界観が漂っている。第48話の「毎日が楽しかったら?」という話が特に良かった。なぜ楽しいことはずっとは続かないのだろう、というぼのぼの純粋な疑問から話が始まる。ぼのぼのは自分で考えたりアライグマくんに聞いたりするけど、どうもしっくりこない。結局相談役のスナドリネコさんに「悲しいことやつらいことが終わるために楽しいことも終わってしまうんだよ」と教えてもらってエンディング。僕は楽しい予定が入ると、その予定が終わってしまった後のことを考えがちだ。何とも損な考え方をする。楽しみは楽しみのままに、楽しい時は楽しいままに、それでいいのにと頭では理解している。けれど心がうまい具合に繋がらない。大好きな作家のカート・ヴォネガットの小説『スローターハウス5』を思い出す。宇宙人にさらわれた主人公が、その宇宙人の星の動物園に入れられる。檻越しに異星人間の会話が始まる。宇宙人はすべての時の結末を知っている。宇宙がどう終わってしまうかも。そして一見平和そうに見えるその星にも、戦争がある。

「今日は平和だ。ほかの日には、きみが見たり読んだりした戦争に負けないくらいおそろしい戦争がある。それをどうこうすることは、われわれにはできない。ただ見ないようにするだけだ。無視するのだ。楽しい瞬間をながめながら、われわれは永遠をついやす――ちょうど今日のこの動物園のように。これをすてきな瞬間だと思わないかね?」
「思います」
「それだけは、努力すれば地球人にもできるようになるかもしれない。いやな時は無視し、楽しい時に心を集中するのだ」

そう、僕にもできるようになるかもしれない。いつからか新しい家族が欲しいと思うようになった。結婚すること、子供を育てることを夢見るようになった。長い間不登校をしていた僕には、学校の勉強を教えることは難しいけど、自分なりに教えられることもあるように思う。自分に困らず、楽しいことを楽しめるようになってほしい。そしたらきっと僕も楽しい。そんなまだ妄想のお話。やらなければならないことがたくさんある。

 


Guns N' Roses - Sweet Child O' Mine (Official Music Video)