ドローム

稲穂の色ではない
古びた金貨のような黄金色の月がいくつもいくつも空高く
24時間周りをうろうろしてる
月は僕に勘違いさせるのだろう
狂気と正気のインスピレーションを得
ただ絵を描くんだって言いながら小銭しか持ってない
ポケットの中にあるくしゃくしゃの覚えのない紙片
今すぐにでも忘れてしまえる
曖昧レンズで物を見て
誰もいないところに向かって議論して
秋が来たら落ち葉を集め
内緒を隠して一緒に燃やす
まばたきしたらもう違う風景の中
ランダムであの人に会うんだ
優しい3つの言葉をもらって生きられる
また会いたくてさようならと言っても
もう夢の中にすらいなくなった
オアシスが無いと知って砂漠をさまようような
僕は壊れたピストルで
時たま吠える1丁のピストルで
行きたくなくても行かなくちゃならない
さっきあった足跡がもう無くなっている
針路を失っても食料は充分
あふれだした恵みに頭を抱えた
滞在する1つの点は次の点を見つけたくても
おんなじような白紙が次のページにあり
インク切れのペンを背負って移動している
だから踏切の向こうで待ってる
通り過ぎる車両の隙間からなにかサインを送ってくれ
そしたら気兼ねなく会いにいける
おれの引いた線におれはとまどっていた
入ってほしいのに誰も入ってはくれない
あの人は例外として
怒りながら入ってきてくれた
おれは怒られてると思ってなかった
嬉しかったという気持ち
記憶をいじくる天使の仕業かもしれない
だとしたらワインボトルの中にある小さな手紙をどう読めばいい
真っ白な部屋で真っ白なパズルを解いては組み立てる
僕についた色は段々はげていって
元ある色を忘れてしまう
透明無色でもそこにある
気化するアルコールのように
何かが頭のてっぺんから抜けていく
これは約束の場所じゃない
いつの間にか取り付けられた汚い契約だ
色んな絵を踏んでまた真っ白に戻れば
おんなじポーズを取りながら次の瞬間へ移動する
この余白になんと書こう
真似されるような筆記の署名しかできないから
僕は僕自身に名前を記して
今日の許可を得る
感情がちぎれて路頭をさまよう
それが見えているのは酔っ払いたちだけ
感じ取れるのはあの人だけ
溶けたろうそくを集めて新しいろうそくにでもしよう
屋根裏部屋で愛を考えるよ
遠慮はいらない
とっととやってくれ
吊り革から手が抜けないまま
天国行き
返事はいらない
最後の勝手
最初のお願い
ここから先は入れません

壁の花

「みんなはさ」

「みんなみたいに」

みんなって誰だ

きみの話を聞いているんだぜ

きみの話し声に耳を傾けてるんだ

気にしなくていいよ

きみはきみに夢中になりなよ

好きなことを喋り続けなよ

自己紹介で嫌いなものなんて

あんまり聞きたくないもの

みんなはいるようでいないもの

だけど決して独りではないこと

いつも片隅に置いてくれよ

思い出してくれよな

いつまでもきみを想っているんだから

運命なんかより

余程素晴らしい選択がある

きみがぼくを選ばなくても

忘れないでくれよな

こういうやつもいるんだぜ

覚えていてくれよな

memo

いくら知っても知りたりないのは
僕のわがままな想いだろうか
ただただ僕はきみに愛されたい
僕はきみに愛されたい

好きなぶんだけ話しておいて
返事はいらないなんてわがままじゃないか
それでも僕はきみを愛してる
僕はきみを愛してる

愛は単純に咲いた花のように思う
愛がないと僕らは味気なく思う
水をあげる 見つめている

僕がきみに気付いていたって
きみは僕に気付いてなくて
愛されるより愛すこと
愛されるより愛すこと

純度の高いものが好きだ
それは僕にあるのかないのかわからないもので
欲しがっているもので
避けて通ろうとしているもの
100%振り切ったら
それがどちらにせよ
バランスが悪くて倒れてしまう
片足だけで歩けないのと似ている
もし片足だけで歩く事が出来たのなら
感情は希薄になる気がする
それでも純度の高いものが好きだ
研ぎ澄まされたリアリティが好きだ

彼女は入口、僕は出口を

彼女がひろげた入口を前にして
僕はいつも出口を探したがる
冷たい道の上でひねくれてかじかんでいた
街灯に集まる真っ白な蛾たちを見つめ
まき散らされた鱗粉で汚いところを隠したりした
遠くの山に火が見えて
目指すところのような気もするし
ただの誘惑にも思えた
彼女は僕を待ってくれているだろうか
きっと怒るだろうな
それでも彼女は僕を許してくれるだろう
目の前で言うことがなんにもないような僕は
それが怖いと思っているんだ
電信柱の影に幼い頃の姿
「よく出来た人形だよ」
まったくだ

僕の信じることは賭けることに似ていた
恐怖、この震えが1つの音になっているんだな
ならば彼女は音を消してくれるだろうか
歌がうまいからもっと歌えばいいのにと言うと
彼女は歌わない

出口がどこにもないことは知ってる
嫌になるほど考えてきた
未だにロックンロールは僕に都合よくささやくから
夜中に家を飛び出したりする
本当はもっと言いたいことがあると思う
何も隠さず彼女の入口に飛び込みたいのに
僕は冷たい道の上でひねくれてる
いつまでも作業が終わりそうにない工事現場を眺めてる

気の弱い悪魔

暑さはたった1つの音しか出さないみたいだ
その音は不愉快にジリジリと近寄ってくる
表通りにパレードが来て
子供たちが叫びながら手を振っている
なにかください 良いものを
太鼓をどんどんと叩いて
なにかくださいな
閉め忘れた蛇口がすすり泣いている
薄暗い影に隠れて
汗は出るのに涙はでない僕だから
あんなに待ち遠しかった陽の光が
今ではとてもうっとうしい
胸を裂いて心臓に聞いてみたい
本当の気持ちを隠さないでね
きみは大丈夫なんて言えない
だから僕はなにも言えない
ある呪いの中にいる
瞳が真っ黒になっていく
そんな悪魔の絵を見たことがある

やさしい世界

ほんの小さなズルさを噛みしだきながら
ぼくはどんどんズルくなってゆくような気がした
うずくまり、自分の手のひらしか見れなくなって
自分の行く先を自分で決めれなくなっていた
そうして迷い込んだ森の中にはやさしい世界があり
そこにはやさしい人たちが住んでいて
大きな木の下の木漏れ日の中で話をしていた
やさしい人たちを弱い人たちと言う人もいたが
やっぱりやさしい人たちだとぼくは思った
たくさんのいびつなオブジェに囲まれながらぼくはたくさんの話をした
木と話せるという人や、天使が見えるという人や
色々な人がいた。そして誰もが陽だまりのような顔をしていた
やさしい人たちには愛という言葉がなかったけれど
時折吹く風が代わりとなる役割を果たしていた
あの時ぼくはなぜそこから帰ろうと思ったのだろう?
いつの間にかぼくは立ち上がり家に帰ることを皆に告げていた
やさしい人たちは日が暮れても陽だまりの顔だった
ぼくを見送ってくれて、大きく手を振っていた
1人の帰り道ぼくはなるべく何も考えないことにした
ただただ歩いた。それでもちゃんと足は家へと向かっていた
やわらかい向かい風の中でぼくは感じていた
誰にも秘密だと思った
その気持ち