2022-01-01から1年間の記事一覧

突き出した拳をゆっくり開き、その中にある空白を認める。霧は晴れたな。言葉も渋滞するし、帰れないまま死んだりする。いくつもの墓を眺めながら、沈黙に耐えきれずに歌は生まれたのだろう。歌が必要な人たちのために。ともかく、今夜はこの明瞭な頭脳を味…

長い間奏

生活のところどころでヘンリー・ダーガーのことを思い出す。部屋の掃除をしたり夕飯の支度をしたり、超現実的な風景の中で彼が創った超非現実的な風景に想いを寄せる。いや、その超非現実的な壮大な物語を紡ぐことに一生を費やし、誰に見せるでもなく死んで…

もう6月だということにさっき気がついた。低気圧と高気圧にもまれながら、浅い眠りの中でいくつもの夢を見た。萌える草木の光を浴びて、誰も知らない涙をこぼした。その日のうちに掴めそうな感覚が、その日のうちに消えてった。ふるさとを指す一等星が、いつ…

「あゝ、ボーヨー、ボーヨー」と晩年の中原中也はつぶやいていたそうだ。『前途茫洋』とは前途有望の反対語で、この言葉が彼の造語であるということはつい最近知った。中学生の頃、父親の本棚から抜き取った詩集の中に見つけた彼の写真は、弱々しくて悲しそ…

身体いっぱい泣いてみたい

年末より年が明けて三が日が終わったあたりがさびしい。よく笑い合ったもんだ。ありがとう。祭りのあとのさびしさ。贅沢なもんだ。しかし、時間が過ぎていくことをさびしいと思うことこそ老いの象徴みたいな気がするので、やめておきたい。それは友達に教わ…