ばん

誰もいない海辺にボロになった船
焚き火のあとに塩のかたまり
ぼくは白い鳥
七色の夢
星でできた時計
遠きふるさと

 

ピストル ばんばんばん
ピストル ばんばんばん
ばんばんばん
ふるさとに帰る夢をみたのです
みんな泣いておりました
ぼくの戦いは終わりません
ふるさとに帰る夢をみたのですが
目が覚めてもだれもいない
だれもいない
それはぼくもいないような気がする
ピストル ばんばんばん
ピストル ばんばんばん
ばんばんばん
聞いたこともない動物の声
ぼくがいないような気がする 長い夜
毎夜毎夜 ナイフの傷
帰りたいです

頭がいっぱいになる。音も景色も遠くに感じる。
静かなほど怖い。もう一人の自分にベッドに抑え込まれてるように。
あるわけないのに自分に罪を感じ始める。
ただそれも自己愛かと思うとどこまでいってもきりが無い。
僕はなんにも動いてないのに疲れている。ごめんなさい。
この沼から抜け出さないといけない。
ネバーエンディングストーリーの馬みたいだ。
疲れてはいけない。ただちょっと疲れた。
ひとまず抜け出さないと。

からからの夏(八月大成)

読みかけの本をほったらかしたまま。気の抜けたソーダ水を捨てようか迷って。話半分でうなずき、やっぱり遠くの空を見つめてしまう。淡い雲の合間には、たとえば尾崎豊がいる。阿部薫がいる。チャー坊がいる。ただみんなこちらに背を向けている。なにも言葉を発しない彼らから孤独を感じるのは、僕の孤独を認めて欲しいからだろうか。いつの間にか雲の形が変わってる。完成図のない作りかけのパズルの上に寝転んで天井に毒突く。曲がり角から一本の角。現れたのは幻獣ユニコーン。背にまたがって指を吸っているのは僕。まぼろしなんかじゃ、ないんだぞ。きっと空き地に向かっているんだね。子供たちはそれぞれ自分のヒーローに救われたいはずだから。空の青を切り取ったら雲はどこにあるのだろう。ヤケドしそうな空白。僕の名前を呼ぶあの子は僕が宿題をちゃんとしてきたか心配してくれてるみたい。気味の悪い子守唄を聴きながら眠れない赤ん坊は言葉の出口を自分の中に探し始める。当たり前に隠れた嘘がちょっかいを出す。捨てられたゴミは自分の目線を自分では選べない。だからドブ川はやけくそに抱擁してる。ガラスの球体の中であきらめた人が冷たさに頬を当ててる。公園の鳩は石像に優位なのさ。海から生まれてきたはずが海水が目にしみるんだ。仮装し、火葬されることを仮想する人。QはAを後ろの方で待ってる。Zは誰も見てないのをいいことに眠りにつく。悲しい雪女はつららを持って脅迫したが、黙秘権の行使によりつららは解けてしまった。未知に生かされ、殺されて。暑さで干上がった頭脳の空洞で、ビー玉がからからと音を立ててる。念仏まがいのからからの夏。からからの夏。

ふと涙をこぼして 困ってしまう きみ
きみには きみも知らないきみがいる

涙には必ずわけがあって
知らないきみはきみに気づいてほしいことがあるはずだ
助けたいって思ってる
だからきみはきみをあまりいじめないでね

天使分の涙と悪魔分の一生

3羽の天使の影が おままごとをしながら あと1羽の天使を探している
クリスタルの角笛を吹きながら 天国に帰れないままだ
僕はその天使分の涙を流す

羽の破けた悪魔は 子供たちにいじめられている
ただ悪魔だからというだけで いじめられていた
悪魔は反撃しなかった 地獄に堕ちろとも言わなかった
僕はその悪魔分の一生を想う

僕は弱い人間だ

guns

突きつけられたいくつもの銃口は僕を縛る
頭上からは絶えず無数の氷が降ってくるよ
考えることをやめてしまった
痛みと冷たさの似ていること
時間がないのに閉じ込められた羽虫みたいに
本能で飛び回るがぶつかってしまうのに
命ある限り飛べと絶えず命令する誰かがいる
目の前のたった1つの点の黒
その色をすべてと思ってしまう
突きつけられた銃口からギリギリと力が伝わる

見慣れたビルの街並みが

いつしか海に変わっていた

波は涙をさらっていった

それでも水底に咲いた花は上を見上げ

これが最後の歌になるわと

途切れることなく声をあげた

ここはひどく透明な世界

見落としたものは沈んでゆく

それに引っかかった僕らは沈めないから

太陽に一番近い生き物になる

ありがた迷惑な話

選ばされた恵み

化石から蘇ったやつらに今度は食われる番

波は涙をさらっていった

わからなくなってしまった

水平線の先にはなにも見えない