僕はまだ一度も消えたことがないんだ

日記。ASKAの曲に「月が近づけば少しはマシだろう」という曲がある。僕は雨が降ってくれたら少しはマシだろうと思うことならある。しかし、雨が降るのはあり得ることでも、今すぐ月が近づくなんてあり得ないことだ。そんなあり得ないことが起こったとしても、少しはマシなだけなんだ。ああ。嗚呼の方がいいか。自分以外に期待してるうちは変われっこないや。結局誰もが前提としてひとりという経過報告、そして月には誰もいない。それが11番目のアポロの報せ。言葉があって良かったね。けれどもなんにも言えないぜ。

 

頭の中が静かすぎるのも厄介なものだ。なぜだか涙が出たりする。まるで自分の鼓動にいちいち感動してるみたいだ。忙しい方が良いんだよ。隙間があるとロクなことを考えない。余裕を持つことが僕を暗くさせたりもする。火の起こし方も知らないで、漠然と死を望んでみるのか。太陽をじっと見つめてみる。真っ白な闇。

 

飼い猫が一緒に寝てくれなくなったのはなぜだろうな。母親に懐き始めたのは、なぜだろうな。なにか思い出したことがあるのかな?僕はもう子供の頃をあんまり覚えていやしない。自伝なんか書けやしない。本の分厚さを見ただけで、読む気がなくなってしまうようになったんだ。飴玉おくれ、ハッカは除いて。

 

久しぶりに部屋にロックのポスターなど貼った。死んだ人たちばっかりだ。殺された人だっている。大げさなやつに巻き込まれてしまったのだ。むかし思いついた小説に「ロックンロール島に行った話」というのがあるのを思い出した。夭折したロックミュージシャンに憧れる少年がいる。彼は20歳までに自分は死ぬと漠然と考えている。ある日、学校を休んでいよいよ自殺を決行しようとする。だけど怖くて出来やしない。家に戻るにも戻れず、飲まず食わずでついに倒れてしまう。そして変テコな夢を見る。どこかののどかな南の島の浜辺にいて、賑やかな声が聞こえる。死んだはずのロックスターたちが仲良く宴会をしている。酒に酔っ払いながら、鍋とかつついたりしてる。少年は歓迎され、輪の中に入る。憧れのスターたちに会えて嬉しい気持ちを抱きつつも、あまりのだらしない姿に段々と幻滅していく。そして寝ているジム・モリソンの顔に落書きして、舟を漕いで島を脱出する。目が覚めた少年は、それから普通に学校に通って普通に社会人になる。ロックはずっと好きだけど、ロックンロール島で会ったロックスターの音楽を聴くと、思わず笑ってしまうようになる。そんなお話。

 

最近、自分を鼓舞するために使う言葉。僕はまだ一度も消えたことがないんだ。それが事実。もうなにも言うことがない。けれども口がついている。退化してなくなるまでには時間がかかる。意味のないことがあるだろうか?他人に言われるまでもねえ。馬鹿げた質問をされたなら、おまえの頭で考えろって言う。それは僕にも有効だよ。

 

僕はキャッチボールがしたいんだ。僕が投げたぐらい、それ以上の速度で投げ返してほしいんだ。場所ならどこにでもあるからさ。遠慮はいらない、やってくれ

 

忘れてしまうから書いているのではなくて覚えていたいから書いている


くるり-Remember me / Quruli-Remember me


日記。僕というやつは僕にとって一番厄介な存在だと思う。それが大半占めている。雨の中で唄うことより、曇り空の下で唄うことの方が難しいかもしれない。鍵はあるけど扉がない。でもどっかにはあるはずさ。あの人たちもどっかで暮らしているはずだ。今日はたくさんギターを弾いた。いろんな曲を弾いているのにずっと一つの音を弾いているような気がした。灯りを一つにして目を閉じる。祈りは僕を自由にしてくれる。思い出した記憶の中に誰かがいるとほっとする。足取りは軽く、魂は重く。昨日にいる限り、明日はいつも明るいものだ。

年を取るってどんなだろう。結ばれた恋の味わいとは。さあね。そういうのは自分で感じていくものだよ。いろんなスピードがあってな。おまえはおまえで行けばいい。行きて愛せとおまえに命ずる。目の前にあるものを出来るだけ見つめ続けてみるのさ。愛よりもっと良い夢見るには、自分の生き方に夢中になることだ。

心の一番きれいなところ


永遠の光 田辺マモルとラボ・リボルバー


日記。僕は雨が好きだ。あとラブソングが好きだ。だけどいつも雨が降っていては嫌だし、ラブソングばっかり聴いているのも退屈だ。

むかし友達と行ったバーでの出来事を思い出した。お客さんは僕たちの他に上品なおばあさんが一人いただけ。そのおばあさんは急な土砂降りの外を見て「わたし、泳げないから帰れないわ」と言っていた。あまりにドラマチックだったのでよく覚えている。それから僕と友達は走って帰った気がする。それはそれで一つのドラマだっただろう。

初恋の話をするのが好きだった。初恋の人のことを毎日のように思い出していたことがあった。けどもうほとんど思い出さなくなっていることに気付く。別に錆びついているわけではないが、磨く必要は無くなったのだ。トンネルを抜けたところ。霧の向こうの不思議な町。長い長い素敵な夢を見た。

友達が家に泊まりに来たとき、一番早く目が覚めるのは決まって僕だった。カーテンを開けるかどうか迷いながらぼーっと天井を見ていた。僕より先に目が覚める人と一緒に寝たい。


草原にて君を待つ

さいげんなく
ざんござんごと
雨がふる
まっくらな空から
ざんござんごと
おしよせてくる

ぼくは
傘もないし
お金もない
雨にまけまいとして
がちんがちんと
あるいた

お金をつかうことは
にぎやかだからすきだ
ものをたべることは
にぎやかだからすきだ
ぼくは にぎやかなことがすきだ

さいげんなく ざんござんごと
雨がふる
ぼくは 傘もないし お金もない

きものはぬれて
さぶいけれど
誰もかまってくれない

ぼくは一人で
がちんがちんとあるいた
あるいた

「雨」竹内浩三

 
日記。毎日雨が降ったり止んだり。湿気のせいか身体がいつもより重く感じる。しかし植物や動物たちにとっては恵みの雨なのかもしれない。今日も山道で野生の鹿と目が合った。黒曜石のような原始の瞳。まるで何か訴えかけられているような。僕はこう思う。「もう帰れないんだよ」(それってどういうこと?)無数に枝分かれした中の一つの先端で、僕はバランス取りながら雨雲を見つめてる。後ろには何も無いものと思え。

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「日照り雨」黒澤明

黒澤明の映画を次々と借りてきては観ている。カラーになってからの方がおもしろいと感じる。色彩のバランスや構図の取り方にはっとさせられる時がある。黒澤さんという人の想像力の豊かさ、それを形にするこだわりの強さに感動する。自ら描かれた絵コンテは凄まじいものだ。画集を何とか手に入れたい。

歌に出てくる"彼女"や"きみ"に特定の人を思い浮かべる。すると歌に終わって欲しくなくなる。だけども歌は終わる。ならばと自らギターを持って歌いだすけれど、もうそのときには"彼女"も"きみ"もそっぽを向いてしまってる。だけどそれすらメッセージのように思えてくる。出かけようぜ。

考えなければいけないことも、ふと思い浮かぶアイデアも、今の頭の中にはなんにもない。ただ線香花火の火花みたいなものがバチバチと散っていて、僕は黙ってそれを見てる。時折友達が現れて、僕に心無いことを言ってのけたりもする。なぜそんなことを言うんだろう?かと思えば自分の不安や悩む姿が馬鹿らしくなってくる。なんでもやってやればいい!僕はこうやって自分とお喋りし続けているのかもしれない。他人のような自分と。好きな人と話そうぜ。

しばらく実家を離れて暮らしていたが、ふと帰りたくなったので帰った。夏の光に緑が美しく映えて、僕の生まれ育った場所は初めて訪れる場所のようにさえ思えた。光がまぶしいほど音が無くなっていく気がする。沈黙に沈黙と名がつかない、必然的な静けさ。子供の頃使っていたハンモックを引っ張り出してきて寝ころんだ。緑は目を閉じていて、だから僕は安心していられたのだと思った。

僕は何かを待っているのかな?草原の上で。よく遊んだあの草っ原。傘を持って雨を待っているのだろうか。シロツメクサで作った花冠を持って、誰かを...。けれども待つのは苦手な方で、探しに行くのがいいだろう。その途中で降る雨なら、苦でもないだろう。

flower in the rain

急な土砂降りのときに一人でいるのは物悲しい。僕は左手で本のページをめくりながらビールの空き缶に雨粒溜めて飲んでるよ。すると、自分自身の記憶がまるで自分のものでないような気がしてくる。僕にとっての一番の他人が僕になる。そのとき開いていたページには雨のことが書かれていて、偶然を必然のように感じたりする、そんな現象の名前を教えて欲しい。静けさの中で、誰にも聞こえない声で、秘密裏にささやき合う、透明な天使たちがいるのかもしれない。僕にはいつも予感だけがある。アルコールが気化するように身体から古びた考えが抜けていく。だからといって酔いがさめるとは限らない。土砂降りの中で濡れることのない一輪の白い花がある。僕はその花に水をやりたい。

ヘヴン

きみが思うならそうだよ
きっとそうだよ
そこに間違いなんて無いんだよ

僕は今も考えてる
ずっと考えて
わかったことなんて大して無いんだ

ヘヴンはいらない ヘヴンはいらない
出来るならきみと どっかへ行きたい
死んでなんかいないのに きみと話すと僕は
生き返る気がするよ

雨が降っている時でも
雲の上には
晴れ渡る空があるんだね
ねえ、

そこに座る神さまは
どんな顔して
僕たちのことを見るのだろう

ヘヴンはいらない ヘヴンはいらない
出来るだけきみと 一緒に生きたい
ヘヴンはいらない そんなものいらない
出来るならきみと どっかへ行きたい
死んでなんかいないのに きみと話すと僕は
生き返る気がするよ

she see sea


Yuki Murata - 色あせない思い出


浜辺で横になって見てみると海も空もそう大して変わらないのだと思った。僕は何度も沖に舟を出す想像をしていた。一番お気に入りの服を着て、大きな傘を差して舟に乗っている僕にはきっと悩みなんか何もないだろう。飴のように溶けた時間に絡まって身動き取れない。だけどそれが心地いい。海を見ている彼女を見て僕は「カラフルだ」と思った。見えない花がふっと咲いた気がした。聖なる日だった