エンドレスミラー

僕は僕の偽者か。そんなことを思った。
呪いにかかったように泣いて泣いて泣いた。
この呪いは僕にしか解けず、また、僕が解くべき呪いだった。
僕は良い人なんかじゃない。
出会った人たちにかけてきた言葉は、全部自分に言ってたんじゃないのか。
僕は、段々自分が自分から剥がれていく感覚に襲われる。
偽りと虚しさが僕を穴だらけにする。なんだかそれが恥ずかしい。
一人になりたがる。暗い路地の端っこを歩きたがる。そう自分を見せたがる。
際限なく続く鏡の一つ一つに自分が映る。まるでリアリティが無い。
誰もいないっていうことは僕もいないことなんじゃないか。
ただただ一人、押入を開けても風呂場を覗いても目が覚めても。
とっても疲れる。僕は誰のもことも知らないんだ。

あるやさしい人が僕に「あなたは素敵な人だ」と言ってくれた。
しかし僕は、ただ人型に切り取られたビニールなんだ。

7月8日

「どうでもいい」の言葉の後には何もついてこないんだな
僕は知らないことを知りたいと思うけれど
知ってしまうといい気になってしまうようだ
欲張りな芋虫は葉っぱを食い荒らした後、体の重みで枝から落ちてしまう


長い間自分は頭がおかしいと思い続けてきたことを
段々可笑しく思えてきたこと
この手で掴みたいと思ったものが実は空気だったりしたこと
目が覚めたときそばに大事な人がいる未来があるのなら
毛布は2枚備えておこう

歯車が噛み合う瞬間
僕は知る。傷つき、あるいは気づく
それでも笑っていられるチャップリンはすごい

考えなしに出かける夜があってもいい
そういう時は海を見に行くのが最適だとも思う
目に見えないもので尊いのは死んだものの魂ぐらいかもしれない

言葉に惑わされ言葉に支配される
音楽を止めて静けさの中で目を閉じたくなる
それでもあの子の悲しみを知りたくなる
無条件で駆けつけて出来ることを試みたい
わからないことはたくさんあるが
わかっていることの使い方が肝心か

7月7日

日に日にセミの鳴く声が増えていく。
夏が去ってしまってからより、夏が来た時の行き場所が重要だと思った。
年々短く感じる夏に僕は人類の歴史を一瞬の火花のように例え、
また宇宙の端っこがどうなっているかを考えた。
冷たい水でも飲もう。

夏の訪れはいつも仲の良い友達が教えてくれた。
そいつは汗を流しながら僕のところへ走ってきて
「夏だね」と満面の笑みを浮かべる。僕も「夏だね」と微笑み返す。
誰しも結局一人なんだと僕が思い始めてから、そいつは来なくなった。
ごく自然に。10代を振り返るとそれはまぼろしのようにも思われる。
ユニコーンとかペガサスとか、そんな生き物と同類みたいにだ。

 

雨が降らないというのもつまらないから、
季節が変わらなければもっとつまらないに違いない。
見ている人がいなければ、傘を差さないで歩くことが出来るか。

 

暇な夜には空中に女の子の絵を描く。窓を開け、風を入れればその子はいなくなる。
けれども風の吹かない真っ昼間の熱いコンクリートの上、
ふいに現れる彼女は僕が描いたわけじゃない。

ふと一人になったとき君がところかまわず現れるので

僕はその時話している人のことや話の内容を忘れてしまう

やり場なく手を突っ込んだポケットから出てきた錆びたナイフ

いつか僕はこれを誰かに渡そうとしていたようだ

鏡の奥で僕じゃない誰かが笑っているのかな

声を殺した分だけ声が出なくなったりして

流行りの歌を無理して歌う

忘れた頃に思い出したくなる

僕にも羽が、生えてきた

こんなに近くにいたのにあなたのことを何も知らなかった
僕はなんだか馬鹿らしくなって、そして清々しくもある
長い時をかけて繋ぎ合わせていたパズルを目の前で崩された気分だけど
僕は自分がしてたことをロクに考えもしてなかったはずだって
ようやく気づき始めた

今までの僕は、
何か大きな爆弾でも作って人々を驚かしたかったみたい
何かささいな出来事でも心から感動したかったみたい

ただそれは大げさにしていただけかもしれないな
僕はね、ようやく気づき始めた

すると僕にも羽が、生えてきた
別に大喜びすることはなかった
これでどこへでも行けるじゃないかと思ったんだ

心配しないでくれ
心配したってすり減るのは僕ではなくあなたの方だから
心配なんかしなくたっていい
屋根があれば充分だ

悩ましいblue

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誰か僕を解読してくれないか

より一層深くなるblueは僕を海へ還そうとしているみたいだった

それはまるで波打ち際で回り続けるほ乳類の死骸と無数のプランクトンたちであり

そこで溶けることのない人工物はたまらなく寂しがってるだろう

いずれはredがyellowと抱き合いながら東の空から現れる

だが僕には未だ解けずにいる問題があり目をそらすこともできずにいる

「それは間違いだ」という先生のセリフを更に「間違いだ」と指摘する先生が

延々と列を作っていて家族のことも生まれ育った場所のことも忘れてしまった様子

 

誰か僕を翻訳してくれないか

悩ましいblueにwhiteを混ぜたいよ

そう、それは簡単に言えば

もっともっと恋をしたいなとか

自分で素晴らしいと思えて誰かに素晴らしいと思われる音楽を作りたいとか

泣きたいときに涙を流したいしとか

そういうことなんだ

たったそれだけのこと