雨の日に思い出すうた(満鉄小唄)

台風12号が日本列島に上陸した。
閉め切った窓の向こうで雨がびちゃびちゃと音を立てる。
僕には雨の日に必ずと言っていいほど思い出すうたがある。
こんな激しい雨降りでも思わず口ずさんでしまう。

 


ザ・ディランⅡ 満鉄小唄


「満鉄小唄」はいわゆる春歌(性風俗に関連する歌、猥褻な内容を含む歌)
として位置づけられている歌らしい。元は1932年に発表された「討匪行」という軍歌で、「満鉄小唄」はその替え歌である、と。
ネットでこの歌について調べ、ヒットしたブログ記事などをいくつか読んでみたが、
歌が作られた背景や歌詞の内容にはそこまで興味が持てなかった。と言っても歌詞の中にある雨降りの描写が、この歌を雨の日に思い出させるのだけど。

僕が好きなのは、この物悲しいようなメロディーだ。
涙を流すほど感動するわけでもない、なにげなく、心地いいメロディー。
自分が生きたことのない古い時代を懐かしく思うような。
雨降りの日、我が家の軒下にあるベンチに座り、小さく口ずさんでみたりする。
またはギターで静かに弾き語りしたりもする。

この歌は70年代に活動した大阪のフォーク・バンド「ザ・ディランⅡ」のアルバム
「きのうの思い出に別れをつげるんだもの」にシークレット・トラックとして収録されており、
僕は高校生の頃にCDを買って歌の存在を知ったのだった。
ボーカルをとっている大塚まさじさんも当時は20代前半ぐらいで若かっただろうが、
なんというか若者らしからぬ、老成した者の選曲に思える。
自らの感情を表現するのは、なにも歌詞だけではない。
この「満鉄小唄」のメロディーの物悲しさのようなものが、大塚さんの心にもあったのかもしれない。

※他にも、なぎらけんいちが「春歌」というアルバムでカバーしている。

毎日僕は油絵の一番上

色とりどりの山のてっぺん

どうやったって心はくたばらない

無限の気持ちが

僕の知らない星を知りたがってる

泳げなくても浮かんでる

僕の歩いてきた道を

時には不思議がるけれど

やっぱりそれは僕が意図して歩いた道で

この一筆に少し時間がかかってしまうのですが

どうやったって心はくたばらない

きみはわかってる

毎日僕は油絵の一番上

少し前まで寒かった

時間が過ぎることはさみしいことじゃないみたい

新しい音楽が聴こえる

忘れないでいたい(2014)

綺麗すぎる夢を破いて

そこから吹く色んなものが混ざった風を

純粋に受け止めたい

そのとき感じたことを忘れないでいたい

 

人が行き交う道に寝そべって

犬や猫なんかと見ていた景色や人は

とてもへんてこに見えたので

とても面白く見えたので馬鹿らしくなった

 

いつも高架下で寝てるおじいさん

人通りのないところにある信号

西の空を飛んでいくつがいの鳥

馬鹿らしくなってみても線路は続くだろう

どこまでも

 

綺麗すぎる夢を破いて

そこから吹く色んなものが混ざった風を

純粋に受け止めたい

そのとき感じたことを忘れないでいたい

忘れないでいたい

忘れないでいたい

夕暮れの街(2014)

夕暮れの街 陽が落ちれば 通りに小さな灯が点るよ

空には白い一番星が見つけてくれと輝いている

 

夕暮れの街 帰り道で子供達がランドセル背負って

はしゃぎながら走り抜けてゆく

男はひとり遠い目つき

 

「また明日ね」子供達は手を振ってる

また明日へ僕は僕の希望を投げる

 

 

 

ぼくはぼくのすべてをやって残りを祈りに使いたい

すべてが遠く冷たくなっていくようなこの感覚を拭えないのさ
約束からも 力からも 眼差しから 形からも
すべてが遠く冷たくなっていくようなこの感覚がすごく嫌い
すでに通り過ぎた風景の残像であるような
何年も前に録画したテレビ番組を見てるような
透明なプラスチックの箱に入れられた羽虫のような
この形容しがたい感覚をひとり抱えてあらゆる生活の面倒を見るのさ
鉛筆で描いただけの感情が色を塗ってくれと言うけれど
僕は絵具を持っているのかどうか自信がない
何でもいいから書きだして告白するべきだと
身体中の細胞が上を向いて叫ぶけど
白黒コピーの印刷紙の小さな点たちが僕を重くする
初めからオブジェだったかのようだ!お見事
フタを閉め忘れたサイダー、僕から僕が抜けてしまった
橋の下で、約束する
2人だけだから大きな口を叩けるとでも思っていたのか
死に方に古いも新しいも無い
好きなようにやりなさいよ
今ここにいるということが一番前にくるように
誰もいない川で一緒に泣こう
僕たちは午前0時に近づくほど本当になれる
光と影の襤褸をまとったどうしようもないやつらさ
電気仕掛けの結末にバチバチと手を叩いてる、どうしようもないやつらだよ

つけっぱなしのテレビの隣、少し開いたふすまから「もしかして誰にも言えないの?」いや…想像していた自分と違ったことにきまりが悪いだけ。「席を譲りましょうか?」いいんです。立っている方が楽なんですよ。一面一面景色を揃えて次の駅のゴミ箱に捨てる(味の無くなったガムと仲良く)似合った場所が見つからなくても好きな場所があればやっていけるだろ。わざと残した最後の一本を吸って帰る理由を再確認する。路地裏の陰りが優しいから、ずっとそこにはいられない。いつのまにか夜が明けて今僕がどこに立っているかがやっとわかったぜ。思っていたほど近くはないが、歩いていけるということ。電話ボックスの中で透明な身体の女が受話器を握ってる。触れるとあとが付くほどやわらかく、そうそう、それが悲しさだった。ともかく語尾に気をつけろ。語尾が過去と未来の進行を分けるんだぞ。人気のない街並みだからこそなにか伝えようとしてる。切れかかった街灯が俳句を詠む。鳥はなぜわざわざ真上を飛んでいく。あなたは誰かの夢でした。おやすみ。

ブルーハーツが聴こえる

f:id:watashihawatashiyo:20180514000431j:image

ふと開いた本の中からブルーハーツのチェインギャングが聴こえた。ロックにこだわるのとロックに意固地になることは違うなあ。今夜もロックンロールのバイクに乗ってドライブする。燃料は僕次第。