草原にて君を待つ

さいげんなく
ざんござんごと
雨がふる
まっくらな空から
ざんござんごと
おしよせてくる

ぼくは
傘もないし
お金もない
雨にまけまいとして
がちんがちんと
あるいた

お金をつかうことは
にぎやかだからすきだ
ものをたべることは
にぎやかだからすきだ
ぼくは にぎやかなことがすきだ

さいげんなく ざんござんごと
雨がふる
ぼくは 傘もないし お金もない

きものはぬれて
さぶいけれど
誰もかまってくれない

ぼくは一人で
がちんがちんとあるいた
あるいた

「雨」竹内浩三

 
日記。毎日雨が降ったり止んだり。湿気のせいか身体がいつもより重く感じる。しかし植物や動物たちにとっては恵みの雨なのかもしれない。今日も山道で野生の鹿と目が合った。黒曜石のような原始の瞳。まるで何か訴えかけられているような。僕はこう思う。「もう帰れないんだよ」(それってどういうこと?)無数に枝分かれした中の一つの先端で、僕はバランス取りながら雨雲を見つめてる。後ろには何も無いものと思え。

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「日照り雨」黒澤明

黒澤明の映画を次々と借りてきては観ている。カラーになってからの方がおもしろいと感じる。色彩のバランスや構図の取り方にはっとさせられる時がある。黒澤さんという人の想像力の豊かさ、それを形にするこだわりの強さに感動する。自ら描かれた絵コンテは凄まじいものだ。画集を何とか手に入れたい。

歌に出てくる"彼女"や"きみ"に特定の人を思い浮かべる。すると歌に終わって欲しくなくなる。だけども歌は終わる。ならばと自らギターを持って歌いだすけれど、もうそのときには"彼女"も"きみ"もそっぽを向いてしまってる。だけどそれすらメッセージのように思えてくる。出かけようぜ。

考えなければいけないことも、ふと思い浮かぶアイデアも、今の頭の中にはなんにもない。ただ線香花火の火花みたいなものがバチバチと散っていて、僕は黙ってそれを見てる。時折友達が現れて、僕に心無いことを言ってのけたりもする。なぜそんなことを言うんだろう?かと思えば自分の不安や悩む姿が馬鹿らしくなってくる。なんでもやってやればいい!僕はこうやって自分とお喋りし続けているのかもしれない。他人のような自分と。好きな人と話そうぜ。

しばらく実家を離れて暮らしていたが、ふと帰りたくなったので帰った。夏の光に緑が美しく映えて、僕の生まれ育った場所は初めて訪れる場所のようにさえ思えた。光がまぶしいほど音が無くなっていく気がする。沈黙に沈黙と名がつかない、必然的な静けさ。子供の頃使っていたハンモックを引っ張り出してきて寝ころんだ。緑は目を閉じていて、だから僕は安心していられたのだと思った。

僕は何かを待っているのかな?草原の上で。よく遊んだあの草っ原。傘を持って雨を待っているのだろうか。シロツメクサで作った花冠を持って、誰かを...。けれども待つのは苦手な方で、探しに行くのがいいだろう。その途中で降る雨なら、苦でもないだろう。

flower in the rain

急な土砂降りのときに一人でいるのは物悲しい。僕は左手で本のページをめくりながらビールの空き缶に雨粒溜めて飲んでるよ。すると、自分自身の記憶がまるで自分のものでないような気がしてくる。僕にとっての一番の他人が僕になる。そのとき開いていたページには雨のことが書かれていて、偶然を必然のように感じたりする、そんな現象の名前を教えて欲しい。静けさの中で、誰にも聞こえない声で、秘密裏にささやき合う、透明な天使たちがいるのかもしれない。僕にはいつも予感だけがある。アルコールが気化するように身体から古びた考えが抜けていく。だからといって酔いがさめるとは限らない。土砂降りの中で濡れることのない一輪の白い花がある。僕はその花に水をやりたい。

ヘヴン

きみが思うならそうだよ
きっとそうだよ
そこに間違いなんて無いんだよ

僕は今も考えてる
ずっと考えて
わかったことなんて大して無いんだ

ヘヴンはいらない ヘヴンはいらない
出来るならきみと どっかへ行きたい
死んでなんかいないのに きみと話すと僕は
生き返る気がするよ

雨が降っている時でも
雲の上には
晴れ渡る空があるんだね
ねえ、

そこに座る神さまは
どんな顔して
僕たちのことを見るのだろう

ヘヴンはいらない ヘヴンはいらない
出来るだけきみと 一緒に生きたい
ヘヴンはいらない そんなものいらない
出来るならきみと どっかへ行きたい
死んでなんかいないのに きみと話すと僕は
生き返る気がするよ

she see sea


Yuki Murata - 色あせない思い出


浜辺で横になって見てみると海も空もそう大して変わらないのだと思った。僕は何度も沖に舟を出す想像をしていた。一番お気に入りの服を着て、大きな傘を差して舟に乗っている僕にはきっと悩みなんか何もないだろう。飴のように溶けた時間に絡まって身動き取れない。だけどそれが心地いい。海を見ている彼女を見て僕は「カラフルだ」と思った。見えない花がふっと咲いた気がした。聖なる日だった

ナイフを捨てたのに



じっとしてるのが辛かった。夕暮れ、太陽から逃れるようにして海へ向かった。浜辺では子供たちが花火をしていた。海上には大きな客船が停泊していた。波は猛々しく打ち寄せ、なんだか怒られているみたいだった。車に積みっぱなしだったギターを持ち出してきて弾いてみた。ラジオを聴いているような気持ちになった。弾いているのはたしかに僕なのだけど、僕はここにいないようだった。それはこの世で一番悲しい不在だった。ついに誰もわかってはくれなかったのだ。そう思うともう海の生臭さなど気にはならなかった。いずれは海に帰ることをわかっていたから。子供たちはいつの間にか帰っていた。空と海の境目はなくなってしまった。僕は飛ぶことも沈むことも出来ずに浮かんでいた。この街の灯りに思い入れは無い。灯りが消えたままの街灯に同情すら覚える。僕も昔はそうだったなんて誰にも言いたくない。夏の約束は何もしないでおこう。ピンボールのように行き当たりばったりでいい。しかしあの子には心底大丈夫と伝えたい。勝手なことだ。今なら暗闇の静けさがわかる。目を閉じなくても満ち溢れている。

山間を走る夜の電車は少ない灯りを集めて逃げていく。いよいよ言葉が無くなった。人気のない路傍で夢は腰を下ろした。大事なものはとても重い。その重さに支えられてきたはずなのに、どうでもよくなってくるこの感情が憎たらしい。僕はナイフを捨てたのに、あの赤いアドバルーンに手が届かない。僕の日記はそこで終わった。

朝から降る雨は夜には止むものだと思っていた。毎晩モヤモヤした心の内を書きだそうと試みるが、僕には言葉がない。閉め忘れた蛇口の前で空のコップを持って突っ立っている。話しかける相手もいない。それは僕もいないような気がする。少々疲れてしまった。日記でもかっこつけてどうする。結構疲れている。ホッと出来る時間が一瞬たりともない。僕はここにいるのだろうか。今のこの気持ちがすべてになる。世界のなにものとも繋がっていないような気持ち。立ち込める霧の中に消えていきたい。頑張ったところもある。頑張れなかったこともある。誰にもわかってもらえない夢の中。覚めることがあるのだろうか。あんまりもう言うことがない。

「悩みはイバラのように降り注ぐ」ある限られた時間の中で少年が言った。僕は彼に憧れを持っていた。

七に二をたしゃ九になるが


dip - 13 Kaidan Heno Kouya

13階段への荒野を抜けて
独裁者の野心を撃ちおとせ
破裂した心臓に魅かれても

僕を走らせるのは
スピードなんかじゃなくて
痛みだけが新しい世界を映しだすだろう
待つように遅れたい

13階段への荒野」dip

 


SCANCH "13階の女"

彼女にはもうこうするしかないのだ
13階の屋上から身を投げること

いつもだまされ続けた 彼女は運が悪い
良い人だと思っても やっぱりみんな同じ

彼女にはもうこうするしかないのだ
13階の屋上から身を投げること

「13階の女」安全バンド

 

13は、西洋において最も忌避される忌み数である。
「13恐怖症」を、ギリシャ語からtriskaidekaphobia(tris「3」kai「&」deka「10」phobia「恐怖症」)という。
https://ja.wikipedia.org/wiki/13_(%E5%BF%8C%E3%81%BF%E6%95%B0)

 

初めて一人暮らししたアパートが13階段だった。
引っ越した初日、部屋の中で黒人の男に殴り殺される夢を見た。
ただそれだけ。

僕が怖いのは4くらい。
だから4なないように足したり引いたりする。
ただそれだけ。