月の光

愛しかない。もう愛しかない。それより他ない。これからは愛しかない。ここから先には愛しかない。失うものも、得るものも、愛になる。目を閉じて、目が覚めたとき、ありのまま映る世界に充分になる。特別なことをしなくともその世界で事足りる。愛は開くし、愛は吹く。愛は打ち、愛は弾く。いっぱいになると思ったら空っぽになる。ここに立ちながらあそこに立ってる。これは僕が生まれたときの話で、けれども、これはまだ僕が生まれていないときの話だ。愛だけがある。愛だけがたしかにある。愛は静かに壁にもたれかかる。愛は僕に色を塗る。ただ愛だけがある。愛しかない。愛しかないんだ。果たして手を差し伸べたのはどっちだろう。ピアノの音色がぽろぽろとこぼれ落ちる。それはずうっと昔まで。灯りをぜんぶ点けたって、月の光は隠せやしない