僕は知っている。砂のように消えちゃうんである。いつもいつも、なにもかも。だけども握りしめた手の平の熱さが好きだ。失うものがないことに生かされている気がしてくるんだ。今夜、まっすぐ家に帰れなかった僕は、公園の砂場に投げ捨てられたプラスチックのおもちゃを弄びながら、いつまでも陽が沈まなければいいのにと遊び回った幼い頃の僕を背中に背負いこんでしまったようだ。愛情の裏側に生まれた憎悪は、愛されたことの経験により、愛することより決して上回りはしないのだとわかりかけてきたところで、ゆっくり眠っていていいよ。代わりに僕が目を開けてるよ。安心してもいいんだよ。僕はまだ、目を開けている。火星に隠された水のことを考えている。いいかい。いちにのさんで消えてしまうんだよ。いちにのさんで