天国への帰り道を辿ろうとするな

慌ただしい日々の中、浮いては消える日々の泡。数ヶ月前とは打って変わった暮らしっぷりに、ふと、とんでもないことになったなあと思うときがある。現在と比べられるものは未だに過去しかない。それはこれからもそうだろう。子供の頃はとんでもないことなど起きたためしがなかった。幸いなことに、大きな不幸にも出くわさなかった。知らないことが多くって、知ることは新しくって面白かった。なにかを知るたびに僕の心は大きくとんがったり、ギザギザになったりした。僕はその危なっかしく変わっていく心の形を武器のように見立てていた。父がここぞとばかりに取り出して活躍してみせる、十徳ナイフに羨望の眼差しを向けていた。僕の武器は誰かの気を引くためのものだった。

自分に困りたくないのなら、自分をよーく知っておかなければならない、ということを納得出来たのなら、もう誰も頭の中で暴れたりはしないんだろうか。この孤独は、僕が(唯一無二の)僕である、ということを実感できるまでにかかる時間のことを指すのではないだろうか。オチはわかってる。怖がることなどなにもない

ここは世界の真ん中かもしれないけど、地球のギリギリ端っこかもしれない。自分の頭の容量を超えた物事を考えはじめると、途端にどこまでも真っ暗な宇宙空間に放り出されてしまう。そんなときは青と緑を思い出せ。帰る家があって、待ってくれてる人がいる。青や緑を思い浮かべて、呪文のように繰り返せ。そうすれば思い出せる。どこにいても帰ってこれる。大丈夫。思い出せる。くだらない広告の束の向こうに焼き付いた故郷があることを

いつか自分に子供が生まれて、その子が一生懸命絵や図工なんかで作品を作ったら、とにかく褒めてあげたい。