仲間たちの輪から離れ、帰路につくとき、暗闇の中にちょうど1人分の空白を見つける。それが光であった試しはないのだけれど、僕はすっかりそこに落ち着く。暗闇は安物のスポンジのように荒いが、やわらかい。チープというのは簡単に替えがきくから安心する。そういえばさっき、仲間たち、ひとりひとりの笑う顔に気づいた途端、なんだか白けてしまい、さざ波の白いとこみたいに、なんだかどうでもよくなってしまって、時計のことを思い出したことを思い出した。校舎にかけてあるような、ただ時間わかるだけの時計。どうやら僕は、僕を忘れることが出来ないらしい。水に落ちたナルキッソスが、波紋に揺れながら浮かび上がる。僕はあわててバシャバシャやるが、悲しいかな、この惑星の重力には敵わない。それは鳥も蝶も蝙蝠も同じことで、お腹の中にいる時から知っていた。あ、いつのまにやら帰り道が沼のようにドロドロ、と、している。僕に馬の友達はいない。無闇やたらに悲しみを考えたりもしないつもりだ。沼の正体は悲しみだろう。しかし、駅までの道のりは果てしなく、悲しみが付け入る隙は十二分に存在する。僕に馬の友達がいればなあ。泥が映えるような、真っ白い立て髪のやつが。そしたらそいつをここへ置き去りにして、二度とここを訪れないための理由にしてやるのに。