最近、身体の調子がよろしくない。風邪のようで、そうでない。年々冬が苦手になる。10代の頃は冬が好きだった。あの頃の僕の気持ちはほんとにひとりだった。そして、ひとりの時間を有意義に使うことが出来ていた。連休中、とにかく眠った。夜中にどしゃ降りの雨が降った。大きな雷が鳴った。地震が起きた。その時々に目が覚めて、まるでぜんぶが夢のように思えた。朝目が覚めたとき、頭の中に突拍子もないイメージがぼんやりと思い浮かんだ。平安時代とかそのあたり、戦から生き延びた行き場のない武士が、重い甲冑を脱ぎ捨て夜空を眺めてるというものだった。武士にセップクなんてする気はなかったが、生きてる間にいい友達に巡り会えなかったな、となんとなく諦めていた。夢が頭の中を散らかして、僕でないもので僕の形を作ってみせる。僕はわかってると言いながら、その日もなにもしなかった。そう思った。

通勤電車で本を読むことにした。買ったまま読まずに放置していた本を本棚から引っ張り出す。熟した果物をもぎ取る感じと似ていた。『最後のユニコーン』という小説は、僕にはなかなかとっつきにくい文章ではあるが、不思議な静けさが落ち着く。本屋で枕草子の現代語訳を立ち読みしながら、いま一番行きたい場所を思い描いた。静かな静かな美しいところ。

こうあるべきだなんて話からは逃げることにした。テキトーに相槌打って。僕はがらくたの中から宝物を見つけるのが好きらしかった。そのために手が汚れたり、重いものを動かすことを、僕はそれほど気にしていない。

ギターをまったく弾いてない。自分の作るものが虚しくて、すぐに白けてしまう。内に向くほど、いろんな声がうるさくなり、そのどれもが自分自身の発したものだということにウンザリする。自己愛の一人芝居。魂のふぬけ。集中力が、ないんだな。

このエリオット・スミスの未発表のインストがとてもいい。いいなあ。