心になにも無いふりをするほうが難しいんだ


Father And Son - Cat Stevens (Original Video)


昼間に父の何気ない一言にめちゃくちゃ腹が立ってしまい、家を飛び出た。まるで不良少年のようなことをしてしまった。だけど僕の中に未だそんな未熟な少年が卒業出来ずに留まっているのもたしかだった。父の発言で、僕は自分のことがまったく理解されていないことに悲しくもなった。父も勝手だし僕も勝手だと思う。両親に産んでもらい、愛情たっぷり育ててもらったことに感謝している。しかし過去のことでどうしても許せないような怒りや悲しみがたまにこみ上げてくる。その矛先を誰にも向けまいと力いっぱい引っ込めようとするが、それ以上の強い力に引っ張られ、操れなくなる。僕は、父と母に踏み込んで来て欲しかった。父と母の意志を僕にぶつけて欲しかった。それに反発したかった。それに納得したかった。そっとしておいて欲しくなかった。僕はずっと暗闇の中を宙ぶらりんで過ごし、自分がどっちに向いているのかもわからなくなっていた。けどそれは過去の話で、僕はもう大人になったので自分で自分を変えるしかないことはわかってる。自分の成長を知ってるのも自分だからだ。

今朝、事が起こる前に自分が幼かった頃お母さんに抱っこしてもらったときとお父さんに抱っこしてもらったときの違いを、感覚を思い出していた。なぜだかふとそんなことを思い浮かべていたのだった。

今はスーパーの前のベンチに座って日記を書いている。目の前を小さな女の子とそのお母さんが歩きながら話してる。女の子は"水の色は青なのか透明なのか"とお母さんに聞いている。お母さんは適当に相槌をうっている。僕は、水の色は青でもあるし透明でもあると思った。

誰かを理解したいと思い、誰かに理解したいと思われること。寄り添うとはそういうことかな、と僕は思った。長い間"人間は一人だけど、人生は一人じゃない"という言葉を昔読んだ漫画のセリフだと思っていた。しかし、調べてもそんな言葉はどこにもなく、それは僕の内からこぼれ落ちた言葉だったのだと結論付けた。そのことを思い出した。それから父ともう一度話すために家に帰った。あふれるままにはなったが、お互いの気持ちを話し合った。僕は僕が自分の力で家を出て行けば、自分にもみんなにも一番良いんだと話した。ただそのことが未だ自分にとって難しくて悔しい。父は僕の幸せを願っていると言った。そこで僕の中に言葉は無くなった。自分のために動くしかない。家族の幸せを願う。ああ!!